
この記事は、紙やExcelで出面管理をしている建設・設備・電気工事業の現場管理者・総務経理担当者、およびkintone導入を検討するDX推進担当者を対象としています。kintone化に必要なアプリ構成・管理項目・連携先を事前に整理することで、「導入してから設計を見直す」という手戻りを防ぐことが目的です。この記事を読み終えると、自社の出面管理をkintone化できるかどうかを、具体的な判断基準をもとに確認できるようになります。
- 「出面」は自社社員と協力会社で管理目的が異なり、まず対象者を分けて整理する必要がある
- kintone標準機能では表形式の一括入力ができないため、プラグイン(krewSheetなど)の導入要否を事前に判断する
- 出面アプリ・工事台帳・社員マスタの3点を連携させることで、労務費の自動集計が実現できる
- 協力会社の入力手段は、ゲストユーザーとFormBridgeのどちらが適切かを要件で判断する
- APIやプラグインを使うにはスタンダードコース以上が必要で、ライトコースでは設計に制約がある
建設業の出面管理とは何か―「出面」の定義と出勤簿・勤怠管理との違い
「出面(でづら)」とは、建設業において現場ごとに誰が・何日・何時間働いたかを記録する作業記録のことです。勤怠管理(出勤・退勤の打刻管理)や出勤簿(会社全体の在籍管理)とは異なり、出面管理は「工事単位で誰がどれだけ稼働したか」を把握することに主眼があります。
この点で、管理目的が自社社員と協力会社(外注・職人)では明確に異なります。
- 自社社員の出面:給与計算や労務費の原価計上が主目的。工事ごとの工数配分を記録し、人件費を工事台帳に反映させる
- 協力会社の出面:外注費の請求確認・支払管理が主目的。日報・出面表を受け取り、請求書と照合する
この区別を曖昧なまま設計を始めると、1つのアプリに異なる目的のデータが混在し、後から切り分けるのが困難になります。kintone化の最初のステップは、「誰の出面を、何のために管理するか」を整理することです。
紙・Excelによる出面管理の限界と建設業が抱える課題
多くの建設会社では、現場ごとに紙の出面表を作成し、月末に事務所でExcelに転記して集計するという流れをとっています。このやり方では、以下のような課題が積み重なっていきます。
- 現場数・作業員数が増えるほど転記の手間と誤記リスクが増大する
- 現場ごとにExcelファイルが分散し、工事台帳との突合に時間がかかる
- 協力会社からの出面表(紙・メール・LINE)が様式バラバラで統一が困難
- 月次集計のタイミングまで労務費がリアルタイムで把握できない
- Excelのファイルをサーバーで共有しても同時編集や権限管理に限界がある
kintoneで出面管理をする前に整理すべき4つの項目
kintoneの設計を始める前に、以下の4項目を文書化しておくことを推奨します。設計段階で迷う原因のほとんどは、この4項目が曖昧なまま開発を始めることにあります。
① 管理対象:誰の出面を管理するか
自社社員のみか、協力会社も含むか。さらに、職種(施工管理・職人・重機オペレーターなど)で入力項目が変わる場合は、対象者の分類を先に固めます。
② 連携先:どのシステム・帳票と連動させるか
給与計算ソフト、工事台帳、請求管理など、出面データを「どこに流すか」を整理します。連携先によって必要なフィールド設計が変わるため、先に確認が必要です。
③ 入力者:誰が・どのデバイスで・いつ入力するか
現場監督がスマートフォンで日次入力するのか、事務担当が週次でまとめて入力するのかによって、アプリのUI設計と入力フローが変わります。
④ 集計ロジック:何をどう合算して原価に反映させるか
「工事別の労務費合計」「作業員別の稼働日数」「協力会社への支払額」など、必要な集計単位を洗い出します。集計ロジックが複雑なほど、ルックアップや計算フィールドの設計難易度が上がります。
kintone標準機能の落とし穴―表形式入力ができない理由とプラグイン選定の考え方
kintoneのレコードは「1行=1件」が基本構造です。そのため、出面表でよく使われる「縦軸が作業員・横軸が日付」のような表形式(マトリクス入力)を標準機能だけで実現することはできません。
この制約を解消する方法として、krewSheet(クルーシート)というプラグインが広く使われています。krewSheetはkintoneのレコードをExcelのような表形式で表示・編集できるサービスで、複数レコードの一括入力・一括編集が可能になります。サイボウズの公式ソリューションギャラリーでも、建設業の出面管理機能として「現場別の出面管理・作業員一覧の自動作成・ワンクリックでの入退場時間一括入力・工数から労務費として原価計上」が確認できます(出典:kintoneソリューションギャラリー「建設業 業務改善パッケージ」)。
プラグインの選定にあたっては、「表形式入力が必要か」「モバイル入力が主体か」「既存システムとのAPI連携が必要か」という3点を判断軸にするとスムーズです。詳しくはkintone開発費用と見積の考え方で費用感とあわせて整理しています。
アプリ構成例―出面アプリ・工事台帳・社員マスタの連携設計
以下は、建設業でkintone化する際の典型的なアプリ構成の想定例です。実際の設計は業務フローによって変わりますが、骨格の参考としてご確認ください。
- ①「工事台帳アプリ」:工事番号・工事名・工期・予算額を管理。出面データの集計先となる
- ②「社員マスタアプリ」:社員番号・氏名・職種・単価(日当・時間単価)を管理。出面入力時にルックアップで参照する
- ③「出面アプリ」:日付・工事名(工事台帳からルックアップ)・作業員(社員マスタからルックアップ)・稼働時間・労務費(自動計算)を1レコードずつ記録する
この構成では、出面アプリに入力されたレコードを工事台帳アプリで集計することで、工事ごとの労務費累計をリアルタイムで把握できます。サイボウズの公式サンプルアプリとして「工事に関わる社員・外注業者・現場・機械の情報を一元管理できる建設工事日報パック」が提供されており(出典:kintoneソリューションギャラリー「建設工事日報パック」)、これをベースに自社の項目を追加するアプローチも有効です。
給与計算ソフトとの連携が必要な場合は、出面アプリからCSVエクスポートする方法と、APIで自動連携する方法があります。後者はスタンダードコース以上が前提です。
協力会社の日報・出面をどう取り込むか―ゲストユーザーとFormBridgeの使い分け
協力会社(外注先)からの出面データをkintoneに取り込む方法は主に2つあります。それぞれの特徴と向き・不向きを整理します。
ゲストユーザーとして招待する方法
kintoneにはゲストスペース機能があり、社外のユーザーを限定的な権限でkintoneに招待できます。協力会社の担当者が直接kintoneに入力するため、入力漏れや様式の統一がしやすいのが利点です。一方、協力会社にkintoneの操作を覚えてもらう必要があり、IT習熟度が低い職人や少人数の業者には負担がかかる場合があります。
FormBridgeで外部フォームから入力させる方法
FormBridge(フォームブリッジ)は、kintoneと連動したWebフォームを作成できるサービスです。協力会社の担当者はkintoneアカウント不要で、スマートフォンのブラウザからフォームを入力するだけでkintoneにデータが登録されます。操作がシンプルなため、IT習熟度を問わず幅広い協力会社に展開しやすいのが特徴です。
- 協力会社が継続的に複数現場へ関与し、進捗確認も一緒に行いたい → ゲストユーザー
- 協力会社の数が多い・IT習熟度が低い・入力項目を絞りたい → FormBridge
- 入力だけでなく写真添付や承認フローも必要 → ゲストユーザー(権限設計が必要)
導入前に確認すべきポイント(コースの選択・ライセンス数・既存システム連携)
kintone化を進める前に、以下の項目を社内で確認・決定しておくことで、開発中の手戻りを大幅に減らせます。
- コースの確認:ライトコースではプラグイン・API・JavaScript不可。表形式入力や他システム連携が必要な場合はスタンダードコース以上を選択する
- ライセンス数の確認:kintoneのライセンスは社内ユーザー分が必要。協力会社をゲストユーザーにする場合は別途ゲストユーザー数も確認する
- 既存システムとの連携要件:給与計算ソフト・会計ソフト・工事管理システムと連携する場合、API提供の有無・CSVエクスポート可否を事前確認する
- 入力端末の確認:現場でスマートフォン・タブレット入力を行う場合、電波環境やOSバージョンの確認が必要
- マスタデータの整備:社員マスタ・工事台帳の既存データを移行する前にクレンジング(整形・重複除去)を行う
導入前の確認事項を網羅的に整理したい場合は、kintone導入前チェックリストも参考にしてください。
まとめ―kintone化を成功させるための事前整理チェックリスト
出面管理のkintone化は、設計前の整理が成否を大きく左右します。以下のチェックリストで、自社の準備状況を確認してください。
- ☑ 自社社員と協力会社で管理目的・管理項目を分けて整理した
- ☑ 出面データの集計先(給与計算・工事台帳・会計)を明確にした
- ☑ 入力者・入力端末・入力タイミング(日次/週次)を決めた
- ☑ 表形式入力が必要かどうかを判断し、プラグイン要否を確認した
- ☑ スタンダードコース以上が必要かどうかをコース仕様で確認した
- ☑ 協力会社の入力方法(ゲストユーザー or FormBridge)を決めた
- ☑ 既存システムとのAPI連携・CSV連携の要件を確認した
- ☑ 社員マスタ・工事台帳のデータ整備(クレンジング)のめどが立った
これらをすべて整理した上でkintoneの設計に入ることで、開発途中での仕様変更・作り直しを防ぐことができます。kintone公式サイトでも、建設業での活用領域として案件管理・施工管理・協力会社連携が挙げられており(出典:サイボウズ公式「建設業にkintone」)、出面管理はその中核となる業務です。自社に合った設計を最初から行うために、事前の整理に時間をかけることを推奨します。
この記事の確認情報
作成・公開責任: 株式会社IHA
情報確認日: 2026-10-19
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